よく借金をすれば税金が安くなるという認識を持っている経営者の方がいます。確かに、利息分の税金は安くなるのは正しいのですが、果たしてこれが節税対策と言えるのでしょうか。
借金をすれば当然、元本に利息を付けれ返済をしなければなりません。仮に100万円円を年利2%で一年後に返済する金銭消費貸借契約を結んだとすると、経費になるのは2万円だけです。2万円経費が増えたことによる節税効果は税率が30%と仮定すると6000円になります。
ではこの結果をみて6000円得したと考えるべきかと言えば、決して正しいとは言えません。なぜなら、仮に借入金を興さなければ、そもそも利息の2万円を払う必要がないわけですから、実質的には2万円-6000円=14000円のキャッシュアウトという結果になります。
言われてみれば簡単な話ですが、税金ばかりに目が行き、お金の流れを正しく理解していなければ、無駄な資金流出を招きます。これは元本部分のお金の出入りは損益には関係ないという経理上の仕組みから発生します。
この傾向は不動産の購入のような大きな資金が動く際に顕著に現れます。不動産というのは、土地と建物から構成され、尚且つ金額が非常に大きくなります。
仮に土地5000万円、建物5000万円、計1億円のRC造りの物件を全額借入金(年利2%、返済期間20年)で購入したとします。RC造りの建物の法定耐用年数は47年となっています。
この場合、経費になるのは、利息分200万円と建物の減価償却費220万円の合計420万円だけです。一方で実際に銀行に返済する金額は元本500万円と利息200万円の合計700万円です。つまり経費になる金額とお金の出ていく金額には300万円ほどの差額があります。なぜこれほどの差額が出てくるかというと、建物の耐用年数が借入金の返済期間に比べて長いことと、土地は非償却資産と言われるように経費化できないためです。
不動産経営を行っている方でよくありがちなケースは多額の利益が出ているにも関わらず、全くお金が残っていないというものです。これはお金の流れと損益の流れを正確にシミュレーションしていないためにおこる現象です。
このような現象を回避するためには、まず、経費に出来ない土地に相当する部分は自己資金で購入できるようにすることです。次に、中古物件を探してみることです。中古物件であれば、経費化できる期間を大幅に短縮することも可能になりますので、返済期間と同程度の耐用年数に設定できれば、利益とお金の流れが一致することになります。
この考え方がすべて正しいとは言いませんが、仕事上、「勘定合って銭足らず」という状態の中小企業を少なからず見てきました。
最終的に経営者様の判断ですが、お金の増減と損益とは全くの別物であるという認識は持ったうえで投資判断を行うべきでしょう。