本日、堺市長が辞職をされるというニュースが速報で入ってきました。
ことの発端は、政治資金収支報告書への巨額な記載漏れでした。報道によると2億円を超す金額が計上されていなかったそうです。
原因として会計に精通したものが報告書の作成に携わっていなかったと説明されています。しかし、そもそも、複式簿記という仕組みの上に、この報告書が作られるのであればこのような事態は絶対に起こりえません。
近年、公会計への複式簿記の導入が主張されている背景にも通じるものがあります。
複式簿記の最大の利点は検証可能性です。つまり、ごまかしが効かないということです。堺市長の収支報告書ではいくつもの2重計上の支出が発覚しましたが、これらはマスコミ関係者が複数の報告書を隈なくチェックした結果発見されたものだと思われます。もし、複式簿記を採用して報告書を作成していれば、そもそも作成段階で発見できたはずです。
今回、2重に計上されたものを修正した結果、支出が無かったということになりますが、ではそのお金はどこに行ったのかという疑問が生じます。これに対して繰越金になっていると説明されていますが、これも検証できない為、何の根拠もありません。複式簿記を採用していれば、支出が無ければ必ず現金勘定もしくは預金勘定に残高が残るはずです。通帳の残高と突き合わせを行えば正しいかどうか直ぐにわかります。
実は我々税理士や会計士には登録政治資金監査人制度というものがあり、これに登録することにより政治資金収支報告書のチェックを行うことが出来ます。但し、現状では国会議員にしかこのチェックは適用されていないため、地方議員の報告書には外部の専門家のチェックが入っていません。今後の課題として、適用範囲の拡大は検討するべきかと思いますが、その前提として、複式簿記を採用した帳簿作成を義務付けなければ、監査の体をなしません。
実際に現状登録監査人は監査とは名ばかりで領収書の突合が主な仕事になっており、仮に監査を行ったとしても、今回と同様に収入、支出の計上漏れ、2重計上の問題は解消されなかったのではないかと思われます。