起業支援は当事務所の主たる業務の一つですが、これまでも多くの起業家の方から起業、特に会社の設立について相談を受けております。
会社の設立手続きは複雑で、専門家でも日常的に扱っている方でなければ難しいと思います。専門家でも難しいのですから、一般の方々にはなおさら難しい手続きになります。
設立手続きは我々専門家がサポートできる部分とお客様にやっていただかなければならない手続きに分かれており、後者をいかにわかりやすく説明し、また手続きをなるべく簡素化できるかが我々、専門家の腕の見せ所とも言えます。
お客様にやって頂かなければならない手続きに資本金(出資金)の払い込みという作業がございます。簡単に言えば、資本金として決定した金額を通帳に振り込んでもらうわけですが、時期の問題、名義の問題、通帳の問題などいくつもの注意点があります。結果的に有効な払込証明書を作成出来ず、再度振り込みをやり直してもらったケースもこれまでに数度ありました。
では、この作業を簡素化、もしくは省くことが出来ないのかと言われれば、合同会社に限定されますが可能です。
どうするかというと、銀行に出資金を払い込んでもらう代わりに、「領収書」を合同会社名義で発行し、それをもって払込証明に替えるという方法があります。これであれば書面上だけの話になりますので、出回っている領収書に金額等を記載するだけで済みます。
しかし、私が知る限りではこの方法を推奨している専門家は少ないのではないかと思います。中には手続きが簡単ということで、おススメの方法のように紹介されている方もいらっしゃいますが、少なくとも当事務所では行いません。
その理由は本当に領収書に記載されているお金を保有しているか否かの担保が出来ないからです。例えば、領収書に1億円と記載してしまえば、実際には1億円という大金を持っていなくとも、簡単に出資金1億円の会社が作れてしまいます。これでは資本金(出資金)という制度の趣旨が無意味になってしまいます。
また、通常、出資金として決定された金額は会社の成立後、会社の通帳に資金を移動させますが、お金がないのであれば当然、移動させることが出来ません。つまり、正しい形の会社の帳簿が作成できなくなるのです。
我々は会計専門家ですので、この点は大変重要なポイントになります。
それから、あまり書かれている記事を見たことが無いので、一応記載しておきますが、領収書には印紙を貼るのが原則ですが、この場合の出資金の領収書にも印紙を貼る必要があるのかという疑問がありますが、結論は不要です。
印紙税法では営業に関しない受取書は非課税とされており、印紙税法基本通達では次のように定められています。
株式払込金領収証又は株式申込受付証等)
32 株式払込金(株式申込証拠金を含む。)領収証又はこれに代えて発行する株式申込受付証並びに出資金領収証で、直接会社が作成するものは営業に関しない受取書に該当するものとし、募集及び払込取扱業者が作成するものは営業に関しない受取書に該当しないものとして取り扱う。