少人数私募債と大塚家具

大塚家具といえば、一昔前であれば、他の量販店とは一味違ういわゆるいいものを売ってくれる代名詞のような店だった気がします。しかし、先日の親子喧嘩騒動で評判も地に落ちた感が否めません。

この親子に何があったのか詳しくは知りませんが、税理士として興味深い話を聞きました。この親子喧嘩の根底には相続争いがあるとの報道があります。

創業者の大塚勝久氏は自らが保有する大塚株を死後分散することを避けるために、「ききょう企画」という会社に移転させることを計画していました。ききょう企画の社長は勝久氏の奥さんであり、株主は子供たちであったということです。しかし、ここで問題が発生します。ききょう企画には勝久氏の持つ株式を買い取るだけの資金が無かった。そこで、表題の少人数私募債というスキームを活用することにしました。

少人数私募債とは、端的にいえば少額の社債を自分たちで自由に条件設定できる社債で、証券会社も銀行も関与することが無い。それでも手続き的にはそれなりにややこしく、自由に条件を設定できる社債というだけであればほとんどの中小企業は利用することはなかったはずである。では、なぜ、この少人数私募債という制度が脚光を浴びてきたかというと、節税になるからである。すなわち、通常、所得は全て合算して所得税率をかけて税金を計算するが、この社債に伴う所得、すなわち利息は分離課税が採用され、所得税率は15%となる。所得税の最高税率が55%であることを鑑みれば、半分以下の税金で済むことになる。このため、中小企業であっても、この社債が活用されるケースは多かったわけだ。

大塚家具に話を戻すと、創業者の勝久氏は社債の引受人となり、ききょう企画に15億円の資金を注入した。その資金をもって勝久氏から大塚株を買い取ることとした。ここまではよかったのだが、社債は借金であり、期限がくれば全額を返さなければならない。しかし、この返済を現社長であり、長女である久美子氏が拒否したと言うのだ。なぜ拒否したのかという理由ははっきりとはしませんが、勝久氏から株式を購入するために社債を発行したわけですから、当然返済する資金が残っていたとは思えません。このことは裏を返せば、返せないのであれば、資産である、自分が売り渡した大塚株を返せということになりかねません。そのため、久美子氏は返済期限が到来すると「5年間の期間は便宜上、規定されたもの。5年後には当然、延長が予定されていた」と反論しているようです。

プロキシーファイトでは久美子氏が圧勝しましたが、勝久氏はまだ大口の株主です。面白がるのも失礼ですが、まだまだ目が離せんません。

 

 

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