概算原価の使い道と推定原価の使い道

昭和27年以前から所有の土地・建物・借地権を売却したときの譲渡原価は売却収入金額の5%です。過去に購入等の事実があり、それを裏付ける資料が残っていても、譲渡原価としては、第一義的には5%概算原価が法律上の正当な取得原価です。もし5%の概算原価よりも、実際の取得原価の方が高い場合は、実際の取得原価が譲渡原価とされますが、扱いは第二義的位置付けです。
なお、譲渡原価を売却収入の5%とすることについては、通達で拡大解釈し、昭和28年以後取得の不動産のみならず、株式その他有価証券一般に適用できるものとしています。
第一義的地位の5%の概算原価の本質的な意味は、実原価の証明資料を紛失等した時の救済規定ではない、ということです。実原価がわかっていたとしても、有利であれば使ってよいという意味なのです。裏返して表現すると、実原価の証明資料を紛失等している場合、実原価不明だから5%概算原価を使う、ということにはならない、ということです。不利を強制する意味はそこにないのです。
譲渡資産の取得時期がハッキリしているので、その取得時の売買時価を推定することが可能な場合には、5%の概算原価が不利であれば、5%概算時価ではなく推定時価を採用する方が、立法趣旨に叶っているのです。昭和44年地裁、45年高裁の判決で確定した事例では、税務署サイドが、譲渡資産の取得価格の推定方法として、日本不動産研究所発行の市街地価格指数について物件売却時と取得時のものを求め、物件売却価格にそれらの比を乗じていることに対して、判決はその方法を相当と認定しています。
その後、何件かの判決や裁決があり、取得時期が判明している係争事件では、税務署サイドとして、市街地価格指数による推定時価逆算法を常套手法にしています。
推定時価逆算適用の趣旨は、実原価の証明資料を紛失等した時の救済です。
前提として、譲渡資産の取得時期がハッキリしていなければなりません。もちろん、根拠となる市街地価格指数などの過去の累積された統計データがあることも前提です。

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