退職金制度について

退職金制度というのは日本独特と言いますか、あまり海外ではない制度のようです。

終身雇用の象徴ともいえる制度ですが、最近では企業の負担増加と終身雇用の崩壊もあり採用していない企業も増えてきていると聞きます。

最初に海外ではあなりない制度と書きましたが、ではなぜ、日本では広まったのでしょうか。終身雇用が一般的だった時代があったとはいえ、退職金とは今もらえるべき給料の後払いに過ぎません。生涯賃金はどちらも変わらないのであれば、普通はさっさと給料としてもらいたいと思うのが普通だと思います。

古くは明治時代から退職金制度というものはあったようですが、当時は「ああ、野麦峠」に代表される劣悪な環境の中での長期間の労働を担保するために使われていたようですが、現在の形で急速に広まったのは戦後と考えてよかろうと思います。

では、なぜ広まったのかということですが、もちろん労働組合等による労使交渉の賜物とも言えなくはありませんが、私は税制の後押しが大きかったのではないかと思います。

戦後、シャウプ勧告により35%と決まっていた法人税率は、数年後に42%まで引き上げられました。なぜ引き上げたかと言いますと、朝鮮戦争が影響しています。

朝鮮特需という言葉を昔習ったことがありますが、朝鮮戦争の為の物資の供給をアメリカが日本に任せたために発生した特需です。日本企業は大幅な増益増収となりましたが、棚ぼた的な儲けなら税金をもっと取ろうということで、税率の引き上げがおこなわれました。

しかし、この際に、同時に大きな税制改正が合わせて行われています。それが「退職給与引当金」の創設です。簡単に言えば、今社員が全員辞めた場合に支払うであろう退職金の見積額を費用として認めるというものです。会社にしてみれば、まだ支払う必要もない単なる見積額を費用に出来るわけですから、大いに喚起し、飛びついたはずです。

同時に所得税法の改正も行われ、現在のように退職金を給与所得とは区別して所得計算を行うという仕組みを取り入れました。結果として従業員にとっても大きなメリットが発生することとなりました。

残念ながら、現在では退職給与引当金は廃止されていますが、戦後間もなくの特需と税制改正が我が国の退職金制度を根付かせる契機になったという話でした。

 

 

 

 

 

 

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